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日本書籍出版協会・国際ISBN機関に登録されている出版社P.P.Content Corp.は、日本の詩人千慶烏子の書籍を出版・販売しています。デモ版を読んだり、AmazonやAppleなどのオンラインストアで電子書籍を購入したり、オリジナル作品をご覧いただいたりすることができます。P.P.Content Corp.は、いつでも、どこでも、どのようなデバイスでも書物を読むことができる全く新しい文学の愉しみをご提供しています。

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千慶烏子『冒険者たち』

冒険者たち

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-17-6, 978-4-908810-23-7

事の起こりはこうだ。ある晴れた日の朝、君はどうしようもない不安と焦燥に駆られて、あてどもなく医師の門を叩く。いくつもの関門を潜り抜け、受付の前に受付があり、受付の中にも受付があり、また受付の後にも受付が続くような不可解な構造をした待合室でさんざん待たされたあげく、ようやく診察室に招き入れられると、君はこう告げられるのだ、癌ですってね。ここで君の人生の設計図は大きく狂う。望むと望まざるとにかかわらず、僕たちは突如として冒険に駆り出されるのだ。朝の日差しに美しく輝く流線型のポップアップトースターからこんがり焼けたトーストが吐き出されるところをじっと眺めている君が、エスプレッソをダブルで頼んで鞄を片手にエレベーターの点滅する数字をじっと眺めている君が…(本文より)

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千慶烏子『やや あって ひばりのうた』

やや あって ひばりのうた

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-03-9, 978-4-908810-10-7

わたしは瞳をとじるだろう。瞳をとじて男に接吻をあたえるだろう。海洋をめぐる一連の感情が、わたしの口腔に揮発するのをわたしはそこに見るのだろうか。夜をめぐる不毛なくりかえしが、わたしの瞳にまぶしく息を吹きかえし、わたしのからだにあふれるような樹木の枝をはりひろげてゆくのを、たしかにわたしは見いだすのだろうか。岸によせる潮のひびきがわたしのからだをみずみずしくうるおし、男の息にみちよせる潮の音色がわたしのからだのくまぐまをみたし、そこに、わたしの胸のたかまりのそこに、わたしの息のゆたかさのそこに、わたしのからだの奥深さのそこに、男のからだが、男の息がまざまざとある、そのようなあわあわしい近さのもとで、あるいはそのような至近のゆたかさのもとで…(本文より)

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千慶烏子『ポエデコ』

ポエデコ

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-05-3, 978-4-908810-27-5

自転車を押しながら坂道を登ってゆく彼女を見つけてマリと叫んだ。僕たちの夏の始まりだった。僕たちはその夏一緒に過ごそうと約束していた。誰にも内緒で、自転車を走らせ、一晩でいいから湖のほとりのコテージで一緒に過ごそうと二人だけの約束をしていたのだった。僕は彼女を見つけて名前を叫んだ。半袖のブラウスからのぞく肌という肌のすべてが美しく、額に結んだ粒のような汗までが美しかった。僕たちは夏の盛りの泡立つような虫の声に煽られながら、乾いた唇に唇を重ね、早熟な愛の感情におたがいの肌を寄り添わせるのだった。峠を越えると右手に湖を望んで下り坂を走った。コテージでは最初はどこかためらいがちだったけれど、抱き合う以外に愛を伝える方法を知らない僕たちは、湖畔の美しい光景を見ることすら忘れて…(本文より)

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千慶烏子『アデル』

アデル

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-28-2, 978-4-908810-02-2

海辺にひびく鳥の声を美しいと思った。頬を撫でて行き過ぎる潮のかおりをいとおしいとわたしは思った。もう二度とパリに戻ることはないかもしれないというわたしたち家族の深い絶望の色で、瞳に映るものすべては暗く沈んでおり、また、夜ともなればいつも父を苦しめる亡姉レオポルディーヌの痛ましい記憶にわたしたち家族の思い出は逃れようもなく囚われており、わたしたちは、パリを遠く離れた小さな島の小さな街で息をひそめるように深い喪のただなかにいた。しかし、海辺にひびく海鳥の声を美しいとわたしは思った。頬を撫でて行きすぎる潮のかおりをいとおしいとわたしは思った。この肌にふれる海のひびきが…(本文より)

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千慶烏子『クレール』

クレール

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-06-0, 978-4-908810-08-4

思えば、あの日はじめてサーカスの馬屋で見た中国男がわたしに微笑みかけることをせず、罌粟の咲き乱れる裏庭の片すみで、弦が一本しかない中国のセロを弾いてわたしたち家族を感嘆させることもなく、柔らかいなめし革のような肌を輝かせてわたしの手にうやうやしく接吻することもなく、そのまま馬に乗ってこの小さな村から出て行ってくれたのなら、どれほどよかったことだろうか。葡萄摘みの女たちがまだ早い新芽をいらって夏の収穫に思いをはせるころ、時おり吹く風に初夏の緑が柔らかな若葉をめぐらせるころ、はるか西の果てに海洋を望むアキテーヌの領地に幌を寄せ、どこか物悲しいロマの男たちの奏でる音楽に合わせて…(本文より)

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千慶烏子『デルタ』

デルタ

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-26-8, 978-4-908810-04-6

この海に終わりがあることをわたしは知っている。でも言わない。あの空に限りがあることをわたしは知っている。でも言わない。夕映えにかすむ希薄な空を染めて遠く沖合いに沈もうとするわたしたちヘスペリアの太陽は、本当は太陽ではなく、太陽の廃墟だということをわたしは知っている。でも言わない。言わないのは禁じられているからではなくて、誰もわたしに聞こうとしないから。訊いてくれたら話してあげるかもしれないけれども、誰もわたしに聞こうとしないから。永い永い航海の果て、弔いの歌もなく死んでいった男たちのことをわたしは言わない。もはや忘れられて久しい故郷の歌と残された子供たちの旅路の行方をわたしは言わない…(本文より)

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千慶烏子『TADAÇA』

TADAÇA

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-18-3, 978-4-908810-32-9

あなたはその女(ひと)の胸を吸う。その女の胸のあわいなでしこの蕊をあなたは吸う。その女の腋のすこしばかり湿った暗さをあなたは吸う。愛しい女の肌もあらわなその場所に触れつつ暮れる夏の日のあまいかげりをあなたは吸う。ときどき吹きみだれるその女の髪があなたのほほをかすめることもなく、ときどき耳朶にぬれるその女の髪があなたの指をこばむこともなく、ひだりにむけ、そびらをかえし、あなたのそこに、その口もとに、またその耳もとに、その女の息を散らすあなたがたの夏の臥床にあなたは吸う。みずみずしくひもとかれたその女の肌のしずかなうるおいがあなたのうなじにめぐらされ、もうとうにはだかであることにも飽いたその女の脚があなたのそこにめぐらされ…(本文より)

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千慶烏子『ねじふりこ』

ねじふりこ

千慶烏子著 ISBN: 978-4-908810-30-5, 978-4-908810-15-2

挿画の森にたたまれた首の長い佝僂の花嫁。鳥の半身をもってときどき嬌々とさえずる彼女のくるぶしは、いったい何とひきかえに失われてしまったのだろう。まるい下腹、ゆたかな乳房、そのやや暈のひろいふぞろいな臆見にしくまれた青空のふりこは、いったいいつまで退屈な時を刻み、忘れられた俗謡を彼女にうたわせるのだろう。「たくらまざる世界の乳房」、「たくらまざる天国の果実」、「蜂と蜜蜂たちにささげられる蜜月の賜物」。南を指して錆びついた雄鳥のジャックが、使い古された卑俗な俚言をたくみに弄して彼女に言い寄った昨日の、夏の晩景の暮れなずむ蔵書の叢林を、少年はいったい誰に内緒で見たのだろうか、印度更紗の色褪せた捺染のかたわらで…(本文より)

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NOTE

千慶烏子の書籍にはすべて詳細な解説が用意されています。購読案内として、また作品をめぐる論考や批評としてご覧ください。作品の解説を読むにはメニュー項目から「NOTE」を押してください。下の作品画像または「READ MORE」を押すと解説の続きを読むことができます。解説は各ストアでもご覧いただけます。

千慶烏子『TADAÇA』

冒険者たち

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-17-6, 978-4-908810-23-7

…詩人が詩を書く意味とは何か――。しばしば問われるこの抽象的な問いかけに対するきわめて具体的で明瞭な回答を読者の皆さんは本書に見いだすことができるだろう。千慶烏子の初期の代表作が『やや あって ひばりのうた』であるとするならば、中期の代表作は本書『冒険者たち』になるのではないだろうか。いずれの作品も、詩人が彼自身の切実なテーマと向き合い、渾身の力で格闘している力作である。その揺るぎない完成度はもちろんのこと、どちらの作品も書物それ自体が「詩人が詩を書く意味とは何か」に対する素晴らしい回答になっていることに注目したい。本書に関して言うならば、誰もが容易に想像できる「痛い・辛い・苦しい」から、これだけ豊かな文学空間が立ち上がっているところに、一人の詩人の文学的達成はもとより、人間精神というものの豊かさや強靭さのようなものを読者の皆さんは見出すことができるだろう。また、書物を通して冒険の旅を共にしてきた読者の皆さんは、本書を締めくくる最後の一行に、大きな確信に満ちた希望と清々しいカタルシスを感じ取るにちがいない。本書にあるものをずばり一言で言い表すならば、それは「詩の力(poiesis)」である。それは、その詩的創造の過程において、詩人がみずからをその力によって目覚めさせ、奮い立たせ、立ち上がらせるような力であり、困難な状況を生きられるものにする力である…

千慶烏子『やや あって ひばりのうた』

やや あって ひばりのうた

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-03-9, 978-4-908810-10-7

…しかしながら、この「あなた」と「わたし」は密室で鏡像的な愛を交換し合う満ち足りた関係に終始しているわけではない。むしろ、ヘーゲルの『精神現象学』における「主人と奴隷の弁証法」のように、烈しく争いながらせめぎ合い、格闘し、おたがいを奪い合う闘争的な関係にあると言ってよい。強迫的に反復される不気味なレイアウトの断章が、本書がただ甘美なだけの書物ではないことを読者に訴えかけている。それでは、この「あなた」と「わたし」は何をめぐって争っているのか。詩人に「あなた」と呼びかけるものと呼び止められる詩人は何をめぐって争っているのか。おそらく、それは「わたし」をめぐって争っているのだと言っていいのではないだろうか。「あなた」と呼び止められることではなく、みずから「わたし」と名乗ることをめぐって、書くことのはじまりにおいて「わたし」と書き記す権利をめぐって、書物を著すその創造の過程において「わたし」を名乗る権利について争っているのである。それは詩的表現のはじまりに横たわっている原初的な闘争の光景なのかもしれない。書くことを呼びかけるものと呼び止められて詩を書く詩人とのあいだの闘争である。この闘争の過程を、千慶烏子は旧約聖書『創世紀』第三二章の「天使との格闘」と通称される挿話を引きながら作品を構成している。本書の副題に添えられている「天使との格闘」とは、芸術的創造の明け方に横たわっている神話的光景を指しているのかもしれない…

千慶烏子『クレール』

クレール

千慶烏子著

ISBN: 978-4-908810-06-0, 978-4-908810-08-4

…千慶烏子の「わたし」は作者のもとに固定されておらず、作者と話者の間を、また作者自身の固有性と何らかの代弁者という性格の間を、あるいは剰余と欠落の間を、または彼岸と此岸の間を、あるいは実体と虚像の間を流動するのである。この流動する「わたし」に根差した方法論に千慶烏子のオリジナリティと決定的な新しさがある。(中略)このお互いの欲望を代弁し合う「わたし」の流動性、あるいはおのおのの名前を交換し合う「わたし」の流動性が、千慶烏子の一連の「代理=表象=上演」をめぐる方法論の根底にあり、本書を含むシリーズ作品でよりアグレッシブに展開されていると考えてもいいだろう。本書『クレール』においても、われわれの心の奥深くに潜んでいる何ものかが、あたかも名前を交換したわれわれ自身の鏡像であるかのように「わたし」を語り、神話的形象をまとってテクストの舞台に登場することになる。それは次のように言っても間違いではない。すなわち、それはテクストの舞台で「わたし」という仮面を付けて演じられている仮面の演劇である一方、またわれわれ自身が鏡を前に演じているような鏡像の演劇でもあるのだと。ここに千慶烏子のくらくらするような「代理=表象=上演」の空間が立ち上がる。そして、本書『クレール』では、この代理と表象をめぐる演劇的空間は、暗喩ではなく、文字通りの演劇的空間として出現することになる…

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